施工例の紹介

製紙工場ロール研磨機
ベッド更生工事

水槽型UT (超音波深傷) 装置製作 その他機械製作


製紙工場ロール研磨機ベッド更生工事

製紙工場ロール研磨機ベッド更生工事 全体 ロール研磨機
製紙工場の紙製品を円筒状に巻き取るための
『ロール』 (金属製) の表面を研磨する機械。

「研磨機ヘッドが真っ直ぐ走らなくなってしまい、加工精度が悪いので何とか直してほしい」という依頼で修理することになった工作機械。
実のところ、「加工精度が悪い」と言ってもそれは数値化すると 0.01mm〜0.05mm ほどの非常に微細な数字です。研磨機ヘッドの精度が悪くなる原因として挙げられるのは、剛性の問題からくる機械本体のガタつき (バックラッシ) か、加工ヘッドが摺動するためのガイド (ベッド) の精度不良が可能性としてあります。調査の結果、加工ヘッドのガタは許容範囲内であることが判明し、ベッドの真直度・平坦度を修正して精度を復元することになりました。


製紙工場ロール研磨機ベッド更生工事 オートコリメーターセット さて、まずは更生するベッドがどの程度歪んでいるのか、確認しなくてはなりません。(長年使用しているとどうしても摺動部は磨耗したり、異物混入による傷がついたりして歪んでしまうものなのです)
ベッドの役割として重要なのは、真直度 (真っ直ぐ芯が通っていること) と、平坦度・平行度 (波状ではなく平坦で、且つエッジ部が平行であること) です。
それを調べる機械が、「オートコリメーター」。オートコリメーター本体に、光軸を設置し、対照に置いたミラーとの反射位置で真直・平坦を測定します。
機械本体の裏側 (ベッドの端) に
オートコリメーターをセットしたところ


製紙工場ロール研磨機ベッド更生工事 オートコリメーター精度確認1 ← これがオートコリメーターで →
精度確認をしているところ
製紙工場ロール研磨機ベッド更生工事 オートコリメーター精度確認2

ミラーを約300mm間隔でずらしていき、全長4000mm弱のベッドの歪みを測定していきます。

結果:
 真直度は MAX0.12mm (120μm)、
 平坦度も MAX0.05mm の歪みがあることがわかりました。

こういった工作機械に求められる精度=
 真直度 ±0.025mm
 平坦度 ±0.03mm

求められる精度に対して、測定値は大幅に外れていることがりかります。
このままでは当然、正常な加工を実現できないため、精度修正しなくてはなりません。




手順1:ベッドを裸の状態にする
ベッドの上に乗っている加工ヘッドを分解してどこかに仮置きします。
製紙工場ロール研磨機ベッド更生工事 加工ヘッド分解 ヘッドを固定している金具を外し、
加工ヘッドを分解します。
製紙工場ロール研磨機ベッド更生工事 裸のベッド
これが裸になったベッド。
全長約4m程です。


手順2:摺り合わせ

製紙工場ロール研磨機ベッド更生工事 キサゲ 調定した寸法を参考にしながら、キサゲを使って摺り合わせを施していきます。
ストレートエッヂで当たりの高いところを部分的に削り、都度オートコリメーターで測定しながら少しずつ修正していきます。
かなり地味で地道な作業が続きます。
キサゲで削るときの削り量は多くても約5μm (0.005mm)で、力加減によっては2〜3μm (0.002mm〜0.003mm)。
パッと見ただけでは、削る前と削った後の区別がつきません。
ですから、測定と削りを何度も繰り返して修正していくことが必要です。

※キサゲ=平面仕上げ工の職人専用工具。使い方をマスターするために相当の鍛錬が必要。
※ストレートエッヂ=「正直台」とも呼ばれる仕上げの専用道具。平坦・平行度が限りなく0に近い、基準となるゲージのこと。



製紙工場ロール研磨機ベッド更生工事 平坦度確認 ベッドの上にストレートエッヂを置き、その上に水準器 (1m/0.02mm) を載せて、平坦度を確認しています。
摺り合わせを進めながら、この確認を何度も繰り返します。
とにかく地味なこの作業。
しかも測定するたびに変位する数字も、1000分の1mm単位の微細な数字です。
果てしなく続くと錯覚してしまいそうになるので、意外と強靱な精神力が求められます。



製紙工場ロール研磨機ベッド更生工事 仕上がり面1 摺り合わせをした後の仕上げり面はこんな感じになります。
熟練した仕上げ工になると、この模様に形を整えながら仕上げていくので、見た目も精度もとてもキレイな仕上がりになります。
「千鳥」とか「三日月」等の模様をつけていきます。
やっぱり、精度がよくても見た目汚かったら、ちょっと品質が下がっちやう気がしますしね。

こうして、地道な作業を繰り返して仕上がった後の精度は、

 真直度 = MAX0.02mm (20μm)
 平坦度 = MAX0.015mm (15μm) という結果に。

どうして「0」じゃないの?と疑問が起きるかもしれませんが、実際物理的に100%「0mm」にするのは不可能なのです。
「限りなく"0"に近づける」ことで、許容精度内に修正します。
施工前の約1/30000の歪みが施工後、約1/200000に修正されたことになります。
4mのベッドの中で、0.02mmの歪み。
ということは、平均化すると1m (1000mm) 間で0.005mm (5μm) ということになります。

製紙工場ロール研磨機ベッド更生工事 仕上がり面2

この5μmって、どのくらいの大きさ?っていうのがわかりづらいですが。
例えると、小麦粉。固まって置いてあると肉眼で認識できますが、1粒だけを見つけるのは不可能です。
微粒子測定の結果によると、小麦粉は1粒1〜15μmだそうです。
つまり5μmということは、小麦粉1粒入るか入らないか、というほどの数字なわけです。
ナノテクノロジーの世界から見ればまだまだ高精度と呼ぶに及ばないかもしれませんが、工作機械の精度としては、これはかなり秀逸な数字だと言えます。


手順3:加工機復元
ベッド精度の修正が完了したので、分解して仮置きしていた加工ヘッドを元に戻し、分解前の状態に復元します。
製紙工場ロール研磨機ベッド更生工事 加工機復元 取付の作業はかなり慎重に行います。
仕上げたベッドに傷をつけたら、今までの苦労が水の泡。
この復元作業も、神経を張り詰めて施工します。
施工完了後の試運転の結果で,お客さんの満足度はバッチリでした。
そこで初めて、私たちもホッと胸を撫で下ろします。
数値上で精度を出したとはいえ、実際に加工してみるまでは、本当の結果は見えないからです。